カスタマーサクセス

カスタマーサクセスにおける用語集 「頻出・重要用語」を紹介!

カスタマーサクセスの重要性の高まりを受けて、カスタマーサクセス関連記事を目にする機会も多いのではないでしょうか。しかし、カスタマーサクセスに関連する用語は多く、カタカナで表記されるものも多いので、よく言葉の意味がわからないままになっていることも多いと思います。そこで、カスタマーサクセスの辞書的役割を担う、用語解説記事を作成しました。カスタマーサクセス関連で頻出される用語を解説しているので、是非参考にしてください。

1. カスタマーサクセス関連でよく使われる用語

1-1. SaaS(Software as a Service)

英語では「SaaS」と表記し、「Software as a Service」の略称です。日本語では「サービスとしてのソフトウェア」と訳されます。ベンダーが提供するクラウドサーバーにあるソフトウェアをインターネット環境さえあればデバイスや時間を問わずに使用できるサービスのことです。

これまでは企業がソフトウェアを利用する場合、パッケージとして購入、インストール、起動する必要がありましたが、SaaS の大きな特徴は、インターネット環境があればどこからでも、どのデバイスからでもアクセスすることができます。また、複数人のユーザーで共同で利用することができたり、設定次第では自身でのアップデートも不要です。例としては、GmailやSlack、zoom、Salesforceなどが挙げられます。

1-2. カスタマーサクセス(CS:Customer Success)

英語では「Customer Success」と表記し「CS」と略されることが多く、直訳すると「顧客の成功」を意味します。カスタマーサクセスとは、顧客がサービスを通して利益を得られるように支援し、顧客の成功を通じて自社の利益に繋げることを目的としたビジネス活動のことを指します。

例えば、株式会社SmartHRであれば、顧客がクラウド人事労務ソフトの導入をスムーズに進めるための導入サポート資料、サービスの設定方法や機能の使い方を動画で説明する「SmartHRスクール」などの取り組みによって、能動的に顧客に寄り添い、顧客満足度96.7%という高い支持を得ています。この一連の取り組みをカスタマーサクセスといいます。

1-3. カスタマーサポート(Customer Support)

英語では「Customer Support」と表記され、日本語でも比較的耳馴染みのある言葉だと思います。カスタマーサポートとは、商品/サービスを購入/利用した顧客からの問い合わせに受動的に対応することを指します。わかりやすい例がコールセンターです。よくカスタマーサクセスと比較されますが、カスタマーサポートは常に受動的で、顧客からのサポート要望や連絡があった場合のみサポートを行います。一方、カスタマーサクセスは上記の例のように能動的に顧客支援を行うため、異なるビジネススタイルと言えます。

1-4. カスタマーエクスペリエンス(CX:Customer Experience)

英語では「Customer Experience」と表記され、よく「CX」と略されます。日本語では「カスタマーエクスペリエンス」と呼ばれ、「顧客体験」を意味し、顧客が商品やサービスを購入した時に、購入した商品やサービス以外も含めた体験を通して得る価値のことを指します。

例えば、サービスを購入した際、アフターフォローやメンテナンスが手厚いことは、顧客に対し「サービス以外の部分でも価値ある体験を与えた」ということとなり、カスタマーエクスペリエンス(CX)に繋がったと考えることができます。

1-5. サブスクリプション(Subscription)

英語では「Subscription」と表記され、日本語では「サブスク」と略されることが多いです。サブスクリプションとは、「定期購読・継続購入」を意味します。現代では、商品やサービスを所有・購入するのではなく、一定期間利用できる権利に対して料金を支払うビジネスモデルとして普及しています。

例えば、BtoC業界における代表的な音楽配信サービス「Spotify」や動画配信サービス「Netflix」などが挙げられます。BtoB業界では、「Microsoft Office 365」や「zoom」などが挙げられます。

1-6. インサイドセールス(Inside Sales)

英語では「Inside Sales」と表記され、「インサイド」とあるように、非対面式で行う内勤型営業のことを指し、BtoBビジネスにおいて使われることが一般的です。リードをホットリード(確度の高い見込み顧客)に育て、フィールドセールスへ引き渡す役割を担っています。主に電話やメール、DMなどを使ってコミュニケーションを取ることが一般的です。

1-7. フィールドセールス(Field Sales)

英語では「Field Sales」と表記され、「フィールド」とあるように、対面して行う外勤型営業のことを指し、インサイドセールスからパスされたホットリードを商談化し受注まで繋げる役割を担っています。最近では、実際にオフラインで営業は行わず、zoomやMeetを用いたオンラインでの営業で受注まで繋げることも増えてきています。

カスタマーサクセスは、サービスを利用/導入した顧客に継続的に利用してもらうために伴走支援するのが役割なので、インサイドセールス・フィールドセールスとは異なります。

1-8. オンボーディング(on-boarding)

英語では、「on-boarding」と表記され、顧客がサービスを使い始めてから、使用方法や機能を理解し「サービスを使いこなせる状態=自走できる状態まで支援するプロセス」のことを指します。「オンボーディング完了率」としてカスタマーサクセスのKPIとして重要な指標となることもあります。算出方法は以下の通りです。

「オンボーディング完了率」 = オンボーディングが完了した企業数 ÷ オンボーディング期間の全企業数

1-9. ライフタイムバリュー(LTV:Life Time Value)

英語では、「Life Time Value」と表記され、よく「LTV」と略されます。日本語では「ライフタイムバリュー」と呼び、「顧客生涯価値」を意味します。

「LTV=顧客生涯価値」とは、「1人の顧客が取引を開始してから終えるまでの間でその企業にもたらした利益の総額」のことを指します。LTVを数値化することで、カスタマーサクセスの実現度を判断することができます。最も代表的な算出方法は以下の通りです。

LTV = 平均顧客単価 × 平均購入回数 × 継続期間

1-10. アップセル(up-sell)

英語では「up-sell」と表記され、日本語では「アップセル」と呼ばれます。アップセルとは、顧客が購入したサービスや購入を検討している商品/サービスより、上位のサービスを提案し購入を促すためのセールス手法のことです。アップセルの成功は顧客単価を向上させることに繋がります。

例えば、10万円のPCを利用しているユーザーに対して、高機能な分、単価の高い15万円のPCを購入してもらう、webサービスの1万円/月のプランを利用している顧客に対して、3万円/月のプランへの乗り換えを提案するなどです。

1-11. クロスセル(cross-sell)

英語では「cross-sell」と表記され、日本語では「クロスセル」と呼ばれます。クロスセルとは、顧客が購入したサービスや購入を検討している商品/サービスとは別の商品/サービスの購入を促すためのセールス手法のことです。クロスセルの成功も顧客単価を向上させることに繋がります。

例えば、AmazonでPCを購入する時に、マウスやモニター、ケースなどを一緒に購入してもらう、アパレルECで過去にTシャツを購入した顧客にTシャツに合うパンツをおすすめするというようなものが挙げられます。

1-12. ダウンセル(down-sell)

英語では、「down-sell」と表記され、日本語では「ダウンセル」と呼ばれます。顧客が商品/サービスを利用/検討する際に、そこまでのクオリティを必要としない、希望価格に見合ってないなどの理由から購入/利用を見送る、解約をしようとしている場合、当初、利用/検討していた商品/サービスよりも機能が劣ったり価格が安い下位のサービスを提案して購入を促すセールス手法のことです。

例えば、月額1,000円のプランなら購入しないという顧客に対して、月額500円のプランを提案し購入してもらうように促すことなどが挙げられます。

1-13. チャーンレート(Churn Rate)

英語では「Churn Rate」と表記され、日本語では「チャーンレート」と呼ばれます。チャーンレートとは、顧客がサービスを解約する割合である「解約率」を指す用語であり、カスタマーサクセスにおいては、かなり頻出する用語です。チャーンレートの算出方法は、「カスタマーチャーンレート」と「レベニューチャーンレート」の2種類が存在します。

「カスタマーチャーンレート」とは、「顧客数(全ユーザー)に対し、一定期間に解約した顧客(ユーザー)や、有料会員から無料会員にダウングレードした顧客(ユーザー)の割合のことです。算出方法は以下のとおりです。

「カスタマーチャーンレート」=一定期間に解約した顧客数÷期間前顧客数×100

一方で、「レベニューチャーンレート」とは、「一定期間の収益に対する損失の割合」のことです。その中でも、収益の減少のみに着目する「グロスレベニューチャーンレート」と収益の増加も含める「ネットレベニューチャーンレート」に分けられます。「グロスレベニューチャーンレート」と「ネットレベニューチャーンレート」の算出方法を紹介します。算出方法は以下のとおりです。

「グロスレベニューチャーンレート」 = 今月手放した収益 ÷ 先月の収益 × 100

「ネットレベニューチャーンレート」=(先月の収益 - 今月の収益) ÷ 先月の収益 × 100

1-14. リテンションレート(CRR:Customer Retention Rate)

英語では「Customer Retention Rate」と表記され、よく「CRR」と略されます。日本語では「リテンションレート」と呼ばれ、「顧客維持率」を指す用語です。つまり顧客との良好な関係を保つことを表しています。「顧客定着率」「継続率」などとも呼ばれ、カスタマーサクセスのKPIとして重要な指標です。算出方法は以下の通りです。

「リテンションレート」 = 一定期間の継続利用者数 ÷ 一定期間の新規契約者数 × 100

1-15. ヘルススコア(health Score)

ヘルススコアとは、英語では「Health Score」と表記され、日本語では「ヘルススコア」と呼ばれます。「顧客が自社商品/サービスを継続するかどうかを測る指標」のことです。ヘルススコアのKPIとして、「ログイン回数」「ログイン人数」「セッション時間」などがあります。

例えば、法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」を提供するSansan株式会社では、契約ID数に対して実際にログイン・名刺スキャンしているID数の割合や一人当たりの名刺の読み込み枚数、週ごとの活用頻度をヘルススコアのKPIとして設定し、これらに関数をかけることで100点満点でスコアを出しています。

1-16. 顧客エンゲージメント(Engagement)

英語では「Engagement」と表記され、「企業と顧客の信頼関係」のことを指します。顧客の成功を実現するうえでは非常に重要です。この「顧客エンゲージメント」の向上が、顧客の継続的な自社商品/サービスの利用やアップセル、クロスセルの成功に繋がります。

1-17. 顧客ロイヤルティ(Loyalty)

英語では「Loyalty」と表記され、「企業の商品やサービス / 企業自体に対する顧客の愛着や信頼」のことを指します。顧客が継続的にサービスに愛着・信頼を持ち、利用し続けてくれるかどうかを判断する概念としても使われ、顧客エンゲージメントとほとんど同じ意味で利用されます。

「顧客ロイヤルティ」「顧客エンゲージメント」が非常に高い企業例として、アップル社が挙げられます。「アップル信者」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、まさにこの「アップル信者」こそアップル社に対するロイヤリティやエンゲージメントが非常に高い顧客と言えるでしょう。ゆえに新製品の即売り切れやグレードの高い製品の購入、iPhoneとApple Watchの同時購入の促進などアップセル・クロスセルの成功が著しいのです。

1-18. ハイタッチ(High Touch)

英語では「High Touch」と表記され、日本語では「ハイタッチ」と呼ばれます。LTVの高い顧客に対するアプローチ手法の一つです。「個客」ごとにカスタマイズした、コンサルタント的な手厚いサポートを実施します。

例えば、訪問による導入支援、顧客ごとの高頻度の定例会議や社内勉強会の開催、コンシェルジュサービスなど個別に行うことが多くなります。

1-19. ロータッチ(Low Touch)

英語では「Low Touch」と表記され、日本語では「ロータッチ」と呼ばれます。LTVにおいて中間層の顧客に対するアプローチ手法の一つです。

例えば、パッケージ化された導入プログラムによる支援や、顧客を集めてのワークショップを行うなど、ある程度集団的にサポート、アプローチを行います。

1-20.テックタッチ(Tech Touch)

英語では「Tech Touch」と表記され、日本語では「テックタッチ」と呼ばれます。LTVの低い顧客に対するアプローチ手法の一つです。

例えば、メール配信などの自動的なサポートや、サポートサイト/FAQサイト、顧客自身に解決を促すセルフサービス型のサポートなど、人の手を介さないサポート、アプローチを行います。

Salesforce社を例に、「ハイタッチ」「ロータッチ」「テックタッチ」のそれぞれの対応を紹介します。Salesforce社では、さらに「サポート契約(有償か無償か)」と「顧客の活用フェーズ」の2軸で対応しています。

「ハイタッチ」
主に訪問による支援を行い、有償サポート契約顧客に対し、定着フェーズの「定着サポート」「定着支援」や、活用フェーズの「ビジネスレビュー」「活用支援」を実施しています。

「ロータッチ」
主にリモートによる支援を行い、有償サポート契約顧客に対し契約直後の「Welcome」セミナーの実施や、定着から活用フェーズでの「自習室」「活用セミナー」を提供しています。無償サポート契約顧客に対しては、契約直後から前ふぇーじで「ユーザーグループ・コミュニティ(オンライン&オンライン)」などを提供しています。

「テックタッチ」
主にシステムによる自動支援を行い、有償サポート契約顧客に対しては、契約直後から導入フェーズで「有償サポート活用ジャーニーメール」を提供しています。無償サポート契約顧客に対しては、契約直後の「Welcomeコール」や「オンライン学習コンテンツ」などを提供しています。

1-21. コミュニティタッチ(Community Touch)

英語では「Community Touch」と表記され、日本語では「コミュニティタッチ」と呼ばれます。「顧客コミュニティ」を起点とした対応のことを指します。企業側が「顧客コミュニティ」を設け、企業×顧客、顧客×顧客がコミュニケーションをとりながらサービスに対する疑問や問題を解決することを一つの目的としています。

スウェーデン企業が提供する音楽ストリーミングサービス「Spotify」のコミュニティタッチの事例を紹介します。Spotifyは顧客(ユーザー)コミュニティを導入し、顧客接点を顧客コミュニティに一元化しています。また、顧客コミュニティ内で顧客(ユーザー)が新しい機能や新しい使い方を見つけること、アプリ改善の提案などを可能とし、顧客(ユーザー)の疑問や問題の解決、サービス向上に役立てています。

2. まとめ

以上、カスタマーサクセス関連で頻出する用語を解説いたしました。カスタマーサクセスの理解を深める上で、用語の知識を頭に入れておくことは重要です。カスタマーサクセスの実現に向けて、本記事をうまく活用頂けると幸いです。

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