カスタマーサクセス

カスタマーサクセスにおける「オンボーディング」とは?「用語理解」から「進め方」まで徹底解説!

カスタマーサクセスの実現が重要視されるようになり、「オンボーディング」という言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。カスタマーサクセスの実現には「オンボーディング」が欠かせないと言われていますが、その本質的な意味や具体的な取り組み内容を理解出来ている方は少ないかもしれません。そこで本記事では、「オンボーディング」の用語理解から重要視される背景、進め方のポイントなどについて解説します。

1. カスタマーサクセスにおけるオンボーディングとは?

カスタマーサクセスにおける「オンボーディング」とは、顧客が自社の商品やサービスを活用できるまで支援するプロセスのことです。ここでいう「活用」とは、「商品やサービスの基本的な操作/利用方法の理解や初期設定が完了し、運用が開始された状態」を指します。

オンボーディングという言葉は、従来は人材育成の場面で「企業が新たに採用した人材を組織の一員として定着させ、戦力になってもらうプロセス」を指していましたが、サービスやプロダクトを提供する場面で、「企業が新規顧客を支援し、いち早く使用方法を理解し実用してもらうプロセス」も指すようになりました。

2. カスタマーサクセスにおいてオンボーディングが重要である背景

オンボーディングはカスタマーサクセスにおいてとても重要なものです。その理由を以下の4つの観点から解説していきます。

・顧客ライフサイクルに大きな影響を与える
・早期チャーンの回避
・アップセル・クロスセル率の上昇
・LTVの最大化

2-1. 顧客ライフサイクルに大きな影響を与える

オンボーディングの徹底は「顧客ライフサイクルに大きな影響」を与えます。顧客ライフサイクルとは、顧客がサービスに接触してから関わりを終えるまでの一連の流れをフェーズで管理する考え方です。今回は「導入期」「運用期」「活用期」「定着期」の4つに分けて考えます。

基本的にオンボーディングは、「導入期」に実施されることになります。顧客ライフサイクルは段階的に進むものであるため、「導入期」の段階でオンボーディングが未完成の状態であると、「運用期」へのステップアップが困難になってしまいます。そうすると、当たり前ですが活用や定着にもつながらず、その結果、顧客の継続的なサービスの利用が困難になってしまいます。そのような状態に陥らないためにも、導入期のオンボーディングをスムーズに進められるかが非常に重要となっています。

2-2. 早期チャーン(解約)の回避

オンボーディングの徹底は「早期チャーン(解約)の回避」に繋がります。特にサブスクリプション型のビジネスにおいては、顧客の継続的なサービスの利用を促し、解約率をいかに低く保つかが重要となってきます。契約をしたものの、サービスの使い方が分からないばかりにサービスの価値を体感することなく解約してしまうケースは少なくありません。そのような状況を回避するのが「オンボーディング」です。前述しましたが、顧客のサービス導入期に徹底的なオンボーディングを行うことで、早期解約を避け、顧客の定着率を向上させることが可能となります。

2-3. アップセル・クロスセル率の上昇

オンボーディングの徹底は「アップセル・クロスセル率の上昇」も期待できます。「導入期」から「活用期」まで徹底したオンボーディングを行うことで、サービスに対する顧客満足度を上げることができ、顧客ロイヤリティ(自社サービス・自社自体への顧客の信頼度や愛着度)の上昇へ繋がります。顧客ロイヤリティが上昇すれば、アップセル・クロスセルが成功する可能性が高くなると言えるでしょう。

2-4. LTVの最大化

オンボーディングの徹底は「LTVの最大化」にも繋がります。前述しましたが、オンボーディングを徹底的に行い、顧客ロイヤルティを高めることができれば、アップセル・クロスセル率の上昇へ繋がります。その結果、LTVの向上を実現することが可能になります。

このように、オンボーディングに取り組むことで、解約率を低減し、アップセル・クロスセルによってLTVを向上させることで、売上向上を実現することが可能です。

3. オンボーディングの進め方

オンボーディングの重要性は理解していただけましたでしょうか。では、具体的にはどのようにオンボーディングを進めていけば良いのでしょうか。オンボーディングの効果を最大化させるためには、想定されるLTV別に顧客をセグメント分けし、各セグメントに合ったアプローチを行うことが大切です。今回は3つの観点から解説していきます。

・ハイタッチ
・ロータッチ
・テックタッチ

3-1. ハイタッチ

1つ目は「ハイタッチ」です。ハイタッチとは、LTVの高い顧客に対してオンボーディングを行う手法の一つです。「個客」ごとにカスタマイズした、コンサルタント/コンシェルジュ的な手厚いサポートを実施します。例えば、訪問による導入支援、高頻度の定例会議や社内勉強会の開催など個別的に行うことが多くなります。

3-2. ロータッチ

2つ目は「ロータッチ」です。ロータッチとは、LTVにおいて中間層の顧客に対しオンボーディングを行う手法の一つです。例えば、パッケージ化された導入プログラムによる支援や、顧客を集めてのワークショップを行うなど、一定の規模で集団的にサポート、アプローチを行います。

3-3. テックタッチ

3つ目は「テックタッチ」です。テックタッチとは、LTVの低い顧客に対しオンボーディングを行う手法の一つです。例えば、サポートサイト/FAQサイトの活用や、顧客自身に解決を促すセルフサービス型のサポート、マニュアルの配布など、人の手を介さないサポート、アプローチを行います。

4. オンボーディングを進めるうえでのポイント

では次に、オンボーディングを進めるうえでのポイントを3つの観点から解説していきます。

・オンボーディングのKGIとKPIを明確にする
・顧客の正しい状況を理解する
・定期的に顧客とのコミュニケーションを実施する

4-1. オンボーディングのKGIとKPIを明確にする

1つ目は、「オンボーディングのKGIとKPIを明確にする」ことです。オンボーディングの成果を的確に計測するためには、数値化をする必要があります。ゆえにKGI(重要目標達成指標)KPI(重要業績評価指標)を明確に設定しましょう。

KGIとは、最終的なゴールを示す指標であり、KPIとはKGI(最終的なゴール)に至るまでのプロセスの達成度を評価するための指標です。オンボーディングの最終的な目的は、顧客の定着を促し、自社の収益の最大化に繋げることであるため、この目的に沿ったKGIを設定します。以下にKGIとなる指標をいくつかご紹介します。

・LTV(顧客生涯価値)
・NRR(売上継続率)
・CRR(顧客維持率)
・NPS(顧客推奨度)
・チャーンレート(解約率)
・アップセル・クロスセル率

次に上記のKGIを設定した後、KGIを達成するまでの過程を評価するKPIの例を以下にご紹介します。

・オンボーディング完了率
・初期設定が完了するまでの時間
・機能の利用回数
・ログイン回数
・セッション時間(サービスの利用時間数)
・アクティブユーザー数

KGIとKPIを明確に設定することは、オンボーディングの達成度合いを定量的に分析することが可能となりカスタマーサクセスの実現にも繋がる重要な取り組みです。

4-2. 顧客の正しい状況を理解する

2つ目は「顧客ごとの正しい状況を理解する」ことです。重要なのは「顧客ごと」である点です。自社サービスに対する顧客の使用目的や知識、抱える課題、ニーズは顧客ごとに異なります。全ての顧客に対して、標準化された同じプロセスを適用してはオンボーディングを行うことは難しいと言えます。そのため、オンボーディングのプロセスにおいて顧客ごとの状況を正しく把握し、一人ひとりに合わせたアプローチが重要となります。

4-3. 定期的に顧客とのコミュニケーションを実施する

3つ目は「定期的に顧客とのコミュニケーションを実施する」ことです。商品やサービスによってオンボーディングに要する期間は様々ですが、期間に関わらず顧客とのコミュニケーションを定期的に実施することが重要です。なぜなら、顧客は「分かった気」になるケースが多いためです。

例えば、サービスの導入支援勉強会などで、顧客がその場では理解できたが実際に手を動かそうとすると上手くできない…といったケースはよく起こります。そのようなケースを想定し、勉強会などを行った後に顧客に実際に手を動かすことができているか、疑問点はないかという連絡を定期的に行うなどのコミュニケーションがオンボーディングにおいては重要となります。

上記のような能動的なフォローを行うことで、サービスについての理解が深まり、オンボーディングの徹底へと繋がるだけでなく、顧客ロイヤリティの上昇まで期待できるでしょう。

5. オンボーディングの成功事例

最後にオンボーディングの成功事例を3社解説していきます。

5-1. 株式会社SmartHR

株式会社SmartHRが提供する人事労務業務効率化支援ツール「SmartHR」は、サービス継続率99.7%を誇っています。その要因の1つが「オンボーディングの徹底」です。株式会社SmartHRは、オンボーディングプロセスを、「キックオフ」「トレーニング」「状況確認」「クロージング」の4フェーズに分類し、各フェーズごとに合ったサポートを実施しオンボーディングの徹底に繋げています。

5-2. Slack株式会社

Slack株式会社が提供する「Slack」はビジネスチャットツールとして世界中で利用されています。「Slack」がここまで拡大している要因の1つも「オンボーディングの徹底」と言えるでしょう。「Slack」では、「Slackボット」という機能のチュートリアルを示す案内役を設定することで顧客が使い方を学びながら使用でき、オンボーディングへと繋げています。また、「Slackボット」は、メッセージが端的であるとともに、人間らしくユーモアのあるものとなっています。「わかりやすさ」だけではなく、「親しみやすさ」が、顧客が機能を学習し操作するモチベーションを形成していると言えるでしょう。

5-3. 株式会社PLAID

株式会社PLAIDが提供する「KARTE」は小売業から金融・保険・クラウドサービスなど多種多様な業種のオンラインでのCX(顧客体験)を可視化するツールです。こちらのサービスにおいても「オンボーディングの徹底」が行われています。顧客に対し「導入期」にて「KARTE Kickoff」と呼ばれる、取り組みたい施策を実現するための個別形式のプログラムなどを実施しています。その後は、KARTEで施策を配信するための基本機能をセミナー形式で学び、施策を実配信した後1.5か月程度で振り返りセミナーを受け今後の運用を設計します。施策のブラッシュアップには、個別形式での対応も実施し、PDCAを回し、導入から3か月でのオンボーディング完了を目指しています。

6. まとめ

本記事では、オンボーディングの進め方、および進めるうえでのポイントなどについて解説しました。オンボーディングを徹底することは、カスタマーサクセスを実現するうえで特に注力すべき取り組みであり、顧客にとっても自社にとっても大きなメリットをもたらすことに繋がります。本記事の内容を意識しながら、適切にオンボーディングを実施していきましょう。

関連記事